皆さんこんにちは!モンテッソーリ教師あきえです。この番組は、モンテッソーリ教育に沿って子供についてお話しする番組です。
それでは本日は、早速コメントでご質問をいただきましたので、そちらのコメントにお答えさせていただきたいと思います。
コメント読みますね。
はじめまして。教育の話楽しみです。早速質問させてください。私の息子が2歳11ヶ月になるんですが、最近朝起きてからの機嫌がほぼ毎日悪く、妻(ママ)が自分の思い通りにしてくれないと泣きじゃくって、何も聞き入れないような状態になります。
妻が臨月で赤ちゃん(妹)の話をしたりしているので、赤ちゃん返りの一環かなと思っているのですが、何か息子にしてあげられることはないでしょうか?説明してもあやしても治らない時は、10分くらいアニメなどを見せるか、他の方法で気を紛らわせると落ち着く傾向があります。よろしくお願いします。
ということです。ありがとうございます。
私、インスタグラムでも日頃フォローしてくださっている方々からご質問をいただいて、お答えさせていただいてるんですけど、フォロワーさんはほぼほぼお母様なんですね。
今回このようにVoicyを始めさせていただいて、初めてお父様からのご質問をいただきました。なんかすごく嬉しいですね。ぜひね、お母様だけじゃなくてお父様にも教育についてお伝えしていきたいなって思っているので、すごく嬉しいです。ありがとうございます。
それでは早速、いただいたご質問にお答えさせていただきたいと思います。まず3つのポイントをお話していきたいなと思っています。
まず1つ目なんですけども、これは「秩序の敏感期」ということについてお話したいと思います。
モンテッソーリ教育では「敏感期」という概念、考え方があります。これは、ある能力を獲得するために限られた時期だけ、すごく強いエネルギーが出る特別に敏感な時期のことを「敏感期」と言います。
ちょうどお子様の2歳11ヶ月というのは、「秩序の敏感期」の時期なんですね。この「秩序の敏感期」とは、生きている世界のすべての秩序、ルールや決まり、関係性、パターンといった、私たち大人が当たり前だと思っているようなこと、たとえば「こういう時はこうなる」とか「ここに行けばこれができる」といったものを、子供が何度も経験して、「これはこうなる」「ここに行けばこれができる」「こうなったらこうなる」と、あらゆる秩序を心の中に形成していく時期なんです。
これは生まれたときには、もちろんありません。環境の中で、いつも同じ場所、同じ順序、同じやり方、同じ人など、「いつも同じ」ということを繰り返し繰り返し経験する中で、「当たり前」という感覚を心に作っていくんですよ。
まさに2歳11ヶ月頃というのは、「当たり前」を形成している時期で、ちょうどその秩序がしっかりできあがりつつある頃なんですね。なので、例えばこのコメントの中には明記されていませんでしたが、私のあくまでも想像でお話しすると──
例えば、いつもは朝起きたときにお母さんと一緒に目が覚めて、お布団から出るのが習慣だったとします。それが、臨月でお腹が大きくなってきて、苦しくて先にお母さんが起きていたり、もしかしたらリビングで寝ていたり、起きたときにお母さんが隣にいない──そうすると、子供にとっての「いつもと同じ」が崩れてしまうわけです。
それだけでもう、朝起きた時点で「何か違う」と不安や不快感を覚えるんですね。そしてそれが機嫌の悪さや泣きじゃくる行動として現れてくる。
コメントの中に「思い通りにお母さんが動いてくれない」という言葉がありましたが、これはつまり、お子さんの中にある「こうなるはず」「こうしてくれるはず」という秩序が崩れていることに対する反応なのです。
朝のルーティンの中で、お母さんの対応が1つ変わるだけで、子供の中の秩序は崩れてしまいます。秩序の敏感期にいる子供たちにとっては、その「崩れる」ということが非常に不安で、不快に感じるのです。それを「違う違う!」「嫌だ嫌だ!」という強い表現で表すんですね。
ですので、朝起きてからギャッとなる前の流れの中で、どこかに「いつもと違う」があるのではないか、それを見つけてあげることがひとつの大事なアプローチになります。
もし見つかったら、「あ、ここがこの子にとっては違うんだな」と気づいてあげて、可能であれば元に戻してあげる。もちろん、お母さんの体調や赤ちゃんのことがあるので、すべてを元に戻す必要はありませんし、無理をする必要もありません。
大事なのは、「秩序の敏感期にいる子は、ちょっとした違いでも大きな不安やストレスを感じるんだな」ということを、大人が理解してあげることです。これがまず1つ目のポイントです。
そして2つ目のポイントですが、コメントの中に「赤ちゃんのことをよく話しているから赤ちゃん返りなのかな」という記述がありました。
これは、とても自然なことです。そして、「赤ちゃんが来る」ということを上のお子さんに話してあげることは、とても良いことです。 ですので、これはぜひ続けてあげてください。
今、お母さんのおなかの中でどんなことが起きているのか、いつになったら生まれてくるのかとかね。エコーのお写真とか見せてあげたり、こうなんか「もうすぐお母さんが生まれるよ」みたいな…あっ、お母さんが生まれるんですね。お母さんが入院していて、赤ちゃんが生まれるよ、みたいな絵本とかもたくさんあるので、そういうものを見せてあげるのもとっても素敵なことですね。
このお子さん、上のお子さんにとって心の準備もしていけるし、どんなことがお母さんの中で起こっているのか、ということも知ることができる。
そして、あなたにもこういうふうに誠実に説明しているっていうその姿が、「私は一人の人間として尊重されているんだな」っていうふうに感じる。すごくいいチャンスなので、ぜひこのままでお話をしてあげてください。
そして、なかなかギャーってなって、いやいやってなっている時に、どんなにお話をしても、なかなかお子さんには届かないので、お風呂に入っているゆったりした時とか、寝る前のベッドでの少し落ち着いた時間とかに、ぜひこんなことを伝えてあげてほしいなって思います。
これが2つ目のポイントです。もしかしたら、もうすでにしてらっしゃるかもしれないんですけども、「これから新しい赤ちゃん(妹)が生まれてくるけれども、今までと変わらず私はあなたのお母さんだよ」っていうこと。そして、「たとえ妹が生まれても変わらずずっとあなたのことも大好きだからね」っていうこと。
「家族が増えるけど、今までと思いは変わらないんだよ」ということを言葉にして、ぜひ伝えてあげてほしいなと思います。これが2つ目のポイントです。
続いて3つ目のポイントですね。3つ目のポイントは、関わり方についてお話しします。
この関わり方を2つに分けてお話をしたいと思います。まず関わり方の中の1つは、「お兄ちゃんだから」とか「お姉ちゃんだから」っていうのもそうですけど、上の子だからとか、もうすぐ妹が生まれるからっていうふうに、その子の感情を押し殺させる必要はないっていうことですね。
たまたま先に生まれただけで、決してその子の人格は“お兄ちゃん”ではないんですね。その子自身、あくまでもそのご自身の思いっていうのが大事で、「お兄ちゃんだから何かを我慢する」とか、「いやいやって言っちゃいけない」ということは決してないんですよね。
でも、つい大人はよりスムーズにことが進んでほしいので、「お兄ちゃんだから」「お兄ちゃんだから」って言って、ついついおだてたりとか我慢させてしまったりとかしがちなんですけれども、決してそんなことをする必要はありません。
お兄ちゃんだろうと妹だろうと、お姉ちゃんだろうと弟だろうと、「自分の嫌だったっていう気持ち」「何かが違う」って表現するって、私は本当にすごい素敵なことだと思うんですよね。なので、ぜひ「お兄ちゃんだから」「もうすぐ妹が生まれるんだから、そんないやって言ってちゃ駄目でしょう」っていうふうに止める必要は、もう全然ないです。
ぜひそのままを受け止めてあげてほしいなっていうふうに思います。
そして、続いてはその関わり方のポイントの2つ目なんですね。先ほどの「お兄ちゃんだからって言わなくても大丈夫」っていう話と通ずるんですけども、思いを代弁してあげることなんですよね。
これが私たち大人が、ギャーってなってる子供にしてあげられる最大のことなのかなっていうふうに思います。ついギャーってなってると、もう早く落ち着かせてあげようと思って、あの手この手でいろいろしてあげたりとか、早く泣きやむようにってしてあげたくなってしまうんですけども、「大丈夫、大丈夫」「もういいの、泣かなくていいの」「わかった、わかった」ってしてあげたくなるんですけど、やっぱりそれよりも何よりも、一番最初に「思いを代弁してあげること」。これが最大のポイントであり、私たち大人がそばにいる人としてやってあげられることなのかなというふうに思います。
状況を見ていて、「きっとこれが違ったんだな」とか「これが嫌だったんだな」ってわかる場合、そういう時には、その思っていることをそのまま言葉にして言ってあげるんですね。
「ああそうかそうか、お母さんがこれをやったのが違ったんだね」とか、「朝起きた時にお母さんが隣にいなかったのが嫌だったんだ。いつもと違ったよね。そっかそっか、それが嫌だったんだよね」って。
もうそのまま子供が思っているであろうことを言葉にしてあげる。
私、この言い方は「オウム返しプラスね」っていうふうに呼んでるんですけども、子供が思っていることをオウム返しでそのまま言葉にして、最後に「ね」ってつけるんですね。
「なになにが嫌だったんだよね」って。そうすることで、子供は「ああ、自分のことわかってくれた」って感じることができます。
やっぱり、何もかも分かってほしくて、伝えたくてアピールしてるんですよね。「これが違ったよ、嫌だったよ」って。
でもまだそれが、「私、これが嫌だったんだよね」って、心を落ち着かせて言葉で言える段階ではもちろんないので、それを自分の使える最大限の表現で、ギャーって表すことで伝えようとしている。今はそんな発達段階なんですね。
なので、それを汲み取って、「あっそうかそうか、これが嫌だったんだね」って思いを代弁してあげる。そうすることで、お子さんは「分かってくれた」っていうことも感じることができますし、同時に「自分のこの感情っていうのは、こういうふうに言葉で言うんだな」って。
まあ、そういうふうにね、頭の中で感じているかは分からないんですけど、そういうふうに吸収していくんですね。ああ、この感情、「やだ、やだ」。でも、こういうふうに言うんだって。そうすると、いっぱい、いっぱいそういうことを蓄積してインプットしていくと、自分が言えるようになった時に、心を落ち着かせて、「これが嫌だった」って言葉で表現できるようになっていきます。
なので、ぜひギャーってなってる時には、すぐに「ああもういいの、大丈夫」って泣きやませよう、泣いてるのを落ち着かせようとするよりも、まず先に「そっか、そっか、これが〇〇が嫌だったんだよね」って、そのまま代弁してあげるっていうことが、私たち大人ができる最大のことかなっていうふうに思います。
今いただいたご質問に、3つのポイントでお答えさせていただきました。
まず1つ目が「秩序の敏感期」っていうこと。
そして2つ目が、落ち着いている時に「これから赤ちゃんが生まれても思いは変わらないよ」って、ぜひ伝えてくださいっていうこと。
そして3つ目が関わり方のポイントでした。
関わり方のポイントについては2つに分けて、まず「上のお子さんだから」と言って、泣くことなどをやめさせる必要はないですよ、ということ。
そして2つ目、「思いを代弁してあげましょう」ということをお話ししました。
今は本当に、今まで2年11カ月過ごしてきたこの家族っていう環境が変わろうとしている時期ですよね。新たな家族を迎え入れようとしている時期で、今までこの2年11カ月でいろんなことを吸収してきた上のお子さんにとって、いろいろな「当たり前」だったものが本当に覆されるというか、いろいろ変化が起きていく時期なんですよね。
生まれる今も、生まれた後数カ月も、その変わっていった変化に一生懸命適応しようとします。その中で、うまく自分の中で消化できなくて、キャーってなることが、きっとこれからもあるんじゃないかなって。
そういう姿が、生まれた後も見られるんじゃないかなというふうに思うんですけど、ぜひ今お話ししたことを実践というか、意識していただいて、本当に変化を一生懸命受け入れようとしている。
あんなに小さな体で、2年11カ月過ごしてきたその「当たり前」が変わろうとしている。でも、その変わろうとしたのも、また「当たり前」として自分の中で形成しようとしている。本当に子供なりに一生懸命になってるんだなということを、ぜひ汲み取っていただいて、寄り添っていただけたらいいんじゃないかなというふうに思います。
はい、応援しています。頑張ってください。共に子育て楽しみましょう。
今回ご質問いただき本当にありがとうございました。こんな感じで、いただいたご質問にお答えさせていただきたいと思いますので、またコメントいただけたら嬉しいです。
最後までお聞きいただきありがとうございました。